バイポーラトランジスタのコレクタ電流の式

能動領域バイポーラトランジスタのコレクタ電流式
\begin{align} I_C \approx I_S\ \text{exp}\left(\frac{V_{BE}}{V_T}\right) \end{align}

を導出します。 図1(a)は熱平衡時のnpnトランジスタのバンド図とキャリアの分布です。エミッタ及びコレクタ領域(n形半導体)では電子密度が大きく、ベース領域(p形半導体)ではホール密度が大きいですが、エミッタ-ベース間障壁、コレクタ-ベース間障壁を越えるエネルギーをもつキャリアに着目すると、密度は一様であるのでキャリアの流れは生じません。

図1 npnトランジスタのバンド図(熱平衡及び能動領域)

図1(b)のようにエミッタ-ベース間に順バイアス、コレクタ-ベース間に逆バイアスを印加して能動領域とすると、エミッタ-ベース間障壁が低く、コレクタ-ベース間障壁が高くなるので、エミッタからベースに電子が注入され、注入された電子はベース領域を拡散しコレクタに吸い込まれます。吸い込まれた分だけコレクタ電流Icとして外部回路を流れます。右向きの電子の流れ(破線矢印)は、左向きの電流(実線矢印)に対応することに注意します。

コレクタ電流Icは、エミッタからベースに注入された電子がベース内を拡散し、コレクタに吸い込まれることによって生じます。

一方、ベースからエミッタにホールが注入されるので、注入で消費した分だけベース電流IBとして外部回路から供給されます。

図2 npnトランジスタのベース内電子分布

図2は熱平衡及び能動領域におけるベース内の電子分布です。灰色部分は空乏層です。熱平衡時は(a)のようにベース内に電子が一様に分布しているので流れが生じませんが、能動領域では(b)のようにエミッタからの注入により左端は$n_{b0}\exp(\frac{V_{BE}}{V_T})$、右端はコレクタの吸い込みによって≈0と三角形の電子分布となります。この密度勾配によって電子がコレクタ側に拡散し、コレクタ領域に吸い込まれてコレクタ電流となります。電子の拡散定数をDn、エミッタ面積をA、単位電荷(電子の電荷)をqとすると、

\begin{align} I_C &= qAD_n\times \text{電子密度の勾配} = I_S\ \text{exp}\left(\frac{V_{BE}}{V_T}\right)\\ I_S &= \frac{qAD_n n_{b0}}{W} \end{align}

と目的の式が得られます。飽和電流Isはエミッタ面積Aに比例します。nb0 はベース中の熱平衡電子密度(小数キャリア密度)ですが、温度が上がると指数関数的に増加します。