分布定数回路のシミュレーション(パラメータ設定方法)

伝送線路のパラメータ

ざわざわシミュレータで無損失伝送線路(部品名: microstrip)をシミュレーションするには、それぞれの伝送線路について以下のパラメータを設定します。

  • 特性インピーダンス Z0 (単位はΩ)
  • 速度係数(=波長短縮率) VF
  • 長さ L (単位はメートル)

これらのパラメータは、それぞれのmicrostripのval欄、または.MODELステートメントで設定します。

特性インピーダンス

特性インピーダンスとは、ある位置の電圧・電流を入射波成分と反射波成分に分解して考えたときの、同一方向へ伝搬する電圧波と電流波の比で、伝送線路の単位長さあたりのインダクタンス及びキャパシタンスをそれぞれL,Cとすると、

\begin{align} \text{特性インピーダンス:}\quad Z_0=\sqrt{\frac{L}{C}} \end{align}

と表されます。ただし、L,Cは伝送線路の形状に依存するため、この式より特性インピーダンスを計算するのは困難です。線路の形状・寸法から特性インピーダンスを求めたり、ある特性インピーダンスを実現するための寸法を求めるには、形状ごとに導出された計算式を使用します。

※ プリント基板上に銅パターンで伝送線路を作った場合の特性インピーダンスは、線幅と上下パターン間距離に依存します。

速度係数(=波長短縮率)

伝送線路を伝わる電圧波・電流波の位相速度vpは

\begin{align} \text{位相速度:}\quad v_p = \frac{1}{\sqrt{\mu_0\varepsilon_0\varepsilon_{eff}}} =\frac{c_0}{\sqrt{\varepsilon_{eff}}} \end{align}

となります。c0は光速、$\varepsilon_{eff}$は実効比誘電率で伝送線路を構成する材料の比誘電率と形状(電界のもれ具合)に依存します。vpと光速c0の比を速度係数といいます。

\begin{align} \text{速度係数:}\quad \text{VF}=\frac{v_p}{c_0}=\frac{1}{\sqrt{\varepsilon_{eff}}} \end{align}

たとえば同軸ケーブルのVFは0.66で、進行波の速度はは光速の66%、波長も真空中電磁波の66%となります。


例1: 同軸ケーブルのシミュレーション

抵抗R1に特性インピーダンスZ0=50Ωの同軸ケーブルを接続したときの特性をシミュレーションします。電線メーカのカタログより、速度係数はVF=0.66としています。長さはメートルで指定しています。

このシミュレーションでは、同軸ケーブルの長さLは0.5GHzにおける波長λの1/4としています。λ=vp/f=c0VF/f=396mm, λ/4=99mmとなります。

図1: 同軸ケーブルの長さをメートルで指定しています(L=99mは99ミリという意味です)
シミュレーション

例2: 伝送線路の長さを波長で規格化する方法

伝送線路の長さを指定する際、たとえばf1=0.5GHzにおける波長をλ1としてL=0.25λ1というように、ある周波数における波長で規格化した値で指定することもできます。規格化した長さをL(λ1)とすると、L=L(λ11より、この伝送線路の電気長は

\begin{align} \beta L = \frac{\omega}{v_p}L=\frac{2\pi f}{v_p} L(\lambda_1)\lambda_1 =\frac{2\pi f}{f_1} L(\lambda_1) \end{align}

と表されます(vp=f1λ1)。一方、長さLの伝送線路の電気長は

\begin{align} \beta L =\frac{2\pi f}{c_0\text{VF}}L \end{align} と表されるので、両者を比較して \begin{align} \text{速度係数:}\quad \text{VF}=\frac{f_1}{c_0} \end{align} と設定すればよいことが分かります。
図2: 同軸ケーブルの長さをf1=0.5GHzにおける波長λ1で規格化した値で指定しています。L=0.25は0.25λ1の意味です。シミュレーション結果は例1と同じになります。
シミュレーション