LM741オペアンプ

741型オペアンプは初段の差動アンプが特徴的で、npnエミッタフォロアとpnpベース接地を組み合わせた回路によってpnp入力の差動対と同等の機能を実現しています。 また、同相入力電圧が仕様範囲よりも下がっても出力がHighに跳躍しません。


動作原理

このオペアンプが設計されたのは1960年代後半ですが、当時のpnpトランジスタは電流増幅率が小さく、高周波特性も劣るため、npnトランジスタ入力としています。

図1(a)はpnpトランジスタによるエミッタ接地アンプ、(b)はnpnトランジスタを使用して(a)と同じ動作を実現したもので、Q1はエミッタフォロア、Q3はベース接地アンプとして動作します。 (b)を差動入力とすると(c)になります。

図1(c)ではVB3(Q3,Q4のベース電圧)を固定電圧にしていないのがポイントです。仮に固定電圧にすると、同相入力に対して(入力電圧をVip=Vinとして電圧を上下させると)IC3,IC4が変化してしまうからです。同相入力に対して灰色点線部分はWilsonカレントミラー(BJTカレントミラー回路参照)と同じ動作をします。入力電圧をVip=Vinとして電圧を上下させると、VB3はVip,Vinと連動して上下するのでIC3,IC4は変化しません。

図1: 初段差動アンプの簡略化回路

同相入力電圧の下限値

図2(a)のようにユニティゲインアンプとして入力Vipを徐々に下げた場合、Vipが何Vまで正常動作するか考えます。 イマジナリーショートによりQ2のベース電圧はVip、Q4のエミッタ電圧はVip−0.7V、コレクタ電圧はVBE17+VBE16=0.7+0.7=1.4Vなので、エミッタ-コレクタ間電圧VEC4は

  VEC4 = Vip − 2.1V

となります。よって、Vipが2.3V以下となるとVEC4<0.2VとなってQ4が飽和します。同様にQ3も飽和します。

図2: 741型オペアンプによるユニティゲインアンプ(青字は動作点電圧)

Q3,Q4が飽和したときの等価回路は図3のようになります。飽和したトランジスタの特性は、並列接続したダイオードとほぼ等しくなります。この状態からさらにVipを下げると、Q1,Q3,Q5,Q7がオフするので負帰還が働かなくなり、出力Voutは一定値となります。

図3: 同相入力電圧が下限値以下の場合(青字は動作点電圧、灰色はオフしている素子)

実測値

電源電圧VCC=9Vで測定した結果です。入力が0V付近でも出力がHighに跳躍しません。

図4: uA741CPユニティゲインアンプの入出力特性(実測値)

シミュレーション