TTLインバータ

TTLインバータ回路は、トランジスタの動作領域(カットオフ/能動領域/飽和領域)を考え、トランジスタ回路を理解するのに非常に役立つ回路です。

CMOSインバータならば2個のトランジスタ(PMOSとNMOS1つずつ)で済みますが、TTLの場合は5個のトランジスタと4個の抵抗を使用します。入出力特性も「肩」のような形を持ったイマイチな特性となります。

入出力特性


Vin=0Vのときの動作点

Q1がオンしてコレクタ電流が流れ、Q2のベース電荷を引き抜くのでQ2はオフとなります。Q2がオフだからQ3はベースがプルアップされてオン、Q4はベースがプルダウンされてオフとなっります。よってvout=highとなります。このときのvoutは

\begin{align} V_{out} &= V_{CC} - V_{R2}-V_{BE3} -V_{BE5}\\ &\approx V_{CC}-V_{BE3}-V_{BE5}\\ &\approx 5-0.7-0.7\\ &=3.6\text{ V} \end{align}

となります。Q1は飽和領域(ショートしたスイッチ)となります。このときのIinは

\begin{align} I_{in} = \frac{V_{CC}-(V_{in}+V_{BE1})}{R_1}=\frac{5-(0+0.7)}{4\text{k}}\approx 1.1\text{ mA} \end{align}

となります。


Vin=5Vのときの動作点

Q1は逆方向能動領域で動作します(エミッタ→コレクタの向きに電流が流れます)。 Q1がオンするとQ2,Q4のベース電流が流れるのでQ2,Q4がオンします。Q2がオンするとvb3≈vb4となるためQ3はオフとなります。

Q1のベース電流は

\begin{align} I_{B1} &= \frac{V_{CC}-(V_{BE4}+V_{BE2}+V_{BC1})}{R_1}\approx \frac{5-(0.7+0.7+0.7)}{4\text{k}} =725\text{ uA} \end{align}

Iinは

\begin{align} I_{in}=\beta_RI_{B1}\sim \text{数十uA} \end{align}

となります。$\beta_R\ll 1$は逆方向電流増幅率です。