オペアンプ T形帰還回路による高ゲイン実現方法
動作原理
図1(a)の反転アンプのゲインは−R2/R1ですが、高ゲインとするためにR2を大きくすると、抵抗のもつ寄生容量のためカットオフ周波数が低くなってしまう場合があります。 図1(b)は高抵抗を使用せずに高ゲインを実現する回路です。
図1(b)において信号源VinからR1へ流れる電流をIとすると、イマジナリーショートによりVx=0なのでVy=−R2Iとなります。よって、R3からVy側へ流れる電流は(R2/R3)I、R4を流れる電流は[1+(R2/R3)]Iとなります。よって、
\begin{align} V_{out}=-\left[R_2+\left(1+\frac{R_2}{R_3}\right)R_4\right]I =-\left[R_2+\left(1+\frac{R_2}{R_3}\right)R_4\right]\frac{V_{in}}{R_1} \end{align}となります。R4は(1+R2/R3)倍にブーストされたようにふるまいます。
ゲイン
\begin{align}
\frac{V_{out}}{V_{in}}=-\frac{R_2+\left(1+\frac{R_2}{R_3}\right)R_4}{R_1}
\end{align}
T形帰還回路アンプのブロック図は、図2(a)より入力スケーリングK、図2(b)よりフィードバックファクタβを求めることで得られます。R2≫R3ならば
\begin{align} K &\approx \frac{R_2}{R_1+R_2}\\ \beta &\approx \frac{R_3}{R_3+R_4}\frac{R_1}{R_1+R_2} \end{align}となります。
図2(b)においてR3によってR1,R2がシャントされてβが小さくなる(1/βが大きくなる)ことが分かります。 一方、図2(a)よりR3によってR4がシャントされてもKはそれほど小さくなりません。これがこの回路が高ゲインとなる理由です。 ※ Vin側から見るとR3はR2よりも後ろにある(影響が小さい)、Vout側から見るとR3はR2の手前にある(影響が大きい)ことがポイントです。
全体のゲインは
\begin{align} \frac{V_{out}}{V_{in}}\approx -\frac{K}{\beta}=-\frac{R_2}{R_1}\left(1+\frac{R_4}{R_3}\right) \end{align}となります。
ノイズゲイン
オペアンプの入力換算雑音をVNとすると、ノイズゲインは
\begin{align} \frac{V_{out}}{V_N}=1+\frac{R_2+R_4}{R_1}+\left(1+\frac{R_2}{R_1}\right)\frac{R_4}{R_3} \end{align}となります。