電気回路と水の流れの関係: 電流・電圧とはなにか

電気がない時代

高い位置にくみ上げた水を落下させて水車を回し、そのエネルギーを利用して何らかの仕事をさせることは、古くから利用されています。

水を高い位置にくみ上げるのは位置エネルギーを与えるため、水が落下するのは水に重力が働くためです。水は落下とともに位置エネルギーを失い、代わりに運動エネルギーが増します。落下した水が水車に当たると、水のもつ運動エネルギーが水車に与えられて水車が回転します。

図1は水車を利用したノコギリの例ですが、ギアを使用して回転数を調整し、クランク機構で往復運動に変換しています。

図1: 水車を利用したノコギリ

電気の時代

図1の装置はかなり大がかりですが、「水」の代わりに「電子」を使用し、固体の中で電子の流れを作ったものが電気回路(または電子回路)です。 もっとも簡単な電気回路は、図のように豆電球を光らせる回路で、電球のフィラメントに電流が流れると熱や光を発することを利用しています。

図2: 電気回路

図1の水車を回し続けるには、ポンプを使用して下流側の水を上流にくみ上げる必要があります。図2の電気回路で同様の役割を担っているのが電池です。

このように、水の流れと電気回路は「同じもの」と考えることができますが、流れを生じさせる駆動力が異なります。水の流れは重力によって生じますが、電子は軽いので重力がほとんど働かず、水のように重力による流れは生じません。その代わり、静電気の力が働き、水の流れと同様な流れが生じます。図2(a)は重力によって落下する水、図2(b)は静電気によって移動する電子で、両者は同様のふるまいとなります。

電流の向きと電子の流れる向き

電流はプラスの電荷が流れる向きと定義されています。実際に固体中を移動するのは、(プラスの電荷ではなく)マイナスの電荷をもった電子ですが、全体としての電荷の流れを考えるときは、電子ではなくその周囲のプラスの電荷に着目するのがポイントです。

固体中はマイナスの電荷をもった電子とその周囲のプラスの電荷から構成され、全体としては中性となっています。図(a)は電子が右から左へ移動する様子を描いたものですが、電子が移動すると、移動先のプラス電荷は周囲に追いやられ、元々電子がいた場所にが流れ込んで来ます。

図(b)のように電子の周囲のプラス電荷に着目すると、電子の移動方向とは逆に移動していると解釈できます。

図: 電流と向きと電子の流れる向き

電気系と水力学系の対応

電気系と水力学系の対応は表1のようになります。平たく言うと、電流とは流れる水の量、電圧は水位に対応します。

表: 電気系と水力学系の対応
電気系 水力学系
電荷 Q 水の質量
電流 I(単位時間に通過する電荷量) 単位時間に通過する水の質量
電圧(電位差) V 水1kgの位置エネルギー(=水位×g, gは重力加速度)
容量(キャパシタンス) C タンクの底面積に比例(タンクの底面積×ρ/g, ρは水の密度)
電圧源(電池) Vin 水位Vin/gまで水をくみ上げるポンプ

抵抗の考え方

図1: 抵抗の考え方

抵抗が消費するエネルギー

電圧Vが印加され電流Iが流れている抵抗には、電源から毎秒VI(ジュール)のエネルギーが供給されています。

キャパシタの考え方

図2: キャパシタの考え方

キャパシタに蓄えられているエネルギー

キャパシタの電圧をVからV+dVとするには、電荷をC×dVだけ注入します。新たに注入する電荷の位置エネルギーはV(CdV)だから、注入することによるキャパシタのエネルギーの変化は

\begin{align} dE = CVdV \end{align}

となります。よって

\begin{align} E=\frac{1}{2}CV^2 \end{align}

となります。

ダイオードの考え方

図3: ダイオードの考え方