オペアンプ回路の周波数特性の考え方

オペアンプ回路の周波数特性は、オペアンプ単体の周波数特性とオペアンプの周囲の帰還回路の周波数特性によって決まります。このページでは、オペアンプ、帰還回路の周波数特性と回路全体の周波数特性の関係を考えます。

オペアンプ回路のブロック図

図1: オペアンプ回路のブロック図

ゲインAのオペアンプと帰還回路βから構成されるオペアンプ回路を抽象化して描くと図1のようになります。閉ループゲインは

\begin{align} \left|\frac{V_{out}}{V_{in}}\right| = \left|\frac{A}{1+A\beta}\right| \end{align}

となります。上式は開ループゲイン|Aβ|の大小に応じて以下のように近似できます。

\begin{align} \text{$|A\beta| \gg 1$:}\quad &\left|\frac{V_{out}}{V_{in}}\right|\approx \frac{1}{|\beta|}\\ \text{$|A\beta| \ll 1$:}\quad &\left|\frac{V_{out}}{V_{in}}\right|\approx |A| \end{align}

つまり、開ループゲインが大きい周波数範囲(低周波)では帰還回路の特性が出力に現れ、開ループゲインが小さい周波数範囲(高周波)ではオペアンプ単体の特性が出力に現れます。

非反転アンプの周波数特性

図2(a)の非反転アンプをブロック図で表現すると図2(b)のようになります。 帰還回路は、R2,R1による抵抗分圧回路なので

\begin{align} &\beta = \frac{R_1}{R_1+R_2}\\ \text{逆数をとると}\quad &\frac{1}{|\beta|}=1 + \frac{R_2}{R_1} \end{align}

となります。

図2: 非反転アンプのブロック図と周波数特性   シミュレーション

オペアンプ単体の周波数特性|A|と帰還回路の特性1/|β|を対数スケール(デシベル)で図示すると、図2(c)の赤実線及び赤破線のようになります。開ループゲイン|Aβ|は

\begin{align} \text{開ループゲイン:}\quad 20\log_{10}|A\beta|= 20\log_{10}|A|-20\log_{10}(1/|\beta|) \end{align}

より、赤実線と赤破線の差が開ループゲインとなることが分かります。 図2(c)より、P点では開ループゲイン=1、P点より左側は開ループゲイン>>1、右側は開ループゲイン<<1であることが分かります。 よって、P点の左側では帰還回路の特性(赤破線)、右側ではオペアンプ単体の特性(赤実線)が支配的となるので、トータルの周波数特性は青実線のようになります。

図2の回路は外付け回路で帯域制限していませんが、オペアンプの利得帯域幅積(GBW)によって決まるカットオフ周波数が生じることがわかります。高ゲイン・広帯域のアンプとするには、利得帯域幅積の大きいオペアンプを選ぶ必要があります。


反転アンプの周波数特性

反転アンプの周波数特性は、非反転アンプの場合と若干異なります。 図3(a)の反転アンプをブロック図で表現すると図3(b)のようになります。 帰還回路の特性は

\begin{align} &\beta = \frac{R_1}{R_1+R_2}\\ \text{逆数をとると}\quad &\frac{1}{|\beta|}=1 + \frac{R_2}{R_1} \end{align}

と非反転アンプと同じになりますが、ループの前に

\begin{align} |K|=\frac{R_2}{R_1+R_2} \end{align}

が入るので、入力Vinがスケーリングされて(分圧されて)からフィードバックループに入力されます。

図3: 反転アンプのブロック図と周波数特性   シミュレーション

オペアンプ単体の周波数特性|A|と帰還回路の特性1/|β|を対数スケール(デシベル)で図示すると、図3(c)の赤実線及び赤破線のようになります。

P点の左側における帰還回路の特性(赤破線)と、P点の右側におけるオペアンプ単体の特性(赤実線)を接続すると、|Vout/V1| (青破線の特性)が得られます。これを|K|dBだけ下にシフトしたものが|Vout/Vin|となります。

反転アンプは、入力VinがR1,R2によって分圧されてオペアンプに入力されるので、カットオフ周波数は同ゲインの非反転アンプよりも小さくなります。たとえば、ゲイン=1 (R1=R2)とした場合、|K|=1/2=6 dBとなるので、カットオフ周波数は利得帯域幅積(GBW)の1/2となります。