1次RC回路の過渡解析・AC解析
1次RC回路は電子回路の基本中の基本なので、微分方程式の立て方・解き方とともに、結果も暗記しておくべきです。 また、回路に流れる電流が容量を充放電して電圧が変化する様子をイメージすることも大切です。
1次遅れ回路
図1の1次遅れ回路の単位ステップ応答及び周波数特性は次式のようになります。
\begin{align} \text{単位ステップ応答:}\quad V_{out}(t)&=1-e^{-\frac{t}{RC}}\\ \text{周波数特性:}\quad \frac{V_{out}(s)}{V_{in}(s)}&=\frac{1}{1+sCR}\\ \text{カットオフ周波数}&=\frac{1}{CR}\text{ rad/s} = \frac{1}{2\pi CR}\text{ Hz} \end{align}1次進み回路
1次進み回路はハイパスフィルタ(HPF)特性をもち、時定数RCを信号Vinの周期に対して大きくすると、直流成分を通さずに変化分(信号成分)だけを通します。 この性質より、アナログ回路において1次進み回路はアンプの段間のカップリング回路として使用されます。
方形波に対する応答(定常状態)
図2の回路で入力VinがLow電圧=0V, High電圧=VCCの方形波とすると、Vinの直流成分=VCC/2は出力に伝わらず、定常状態において出力Voutは0Vを中心として振れます。 容量CにはVinとVoutの直流成分の差=VCC/2の電圧が印加されます。
詳細は以下のようになります。
- Vinが0→VCCと+VCCだけ変化すると、Cの電圧(Cに蓄えられた電荷)は急には変化せず、Voutも同じだけ(+VCCだけ)変化します。Vout>0となるので電流Vout/Rが(a)の向きに流れてCが徐々に充電され(Cの両端の電圧が徐々に増加し)、その分だけVoutは徐々に低下します。
- VinがVCC→0と−VCCだけ変化すると、Cの電圧(Cに蓄えられた電荷)は急には変化せず、Voutも同じだけ(−VCCだけ)変化します。今度はVout<0となるので電流Vout/Rが(b)の向きに流れてCが徐々に放電され(Cの両端の電圧が徐々に減少し)、その分だけVoutは徐々に上昇します。
このように、定常状態においてカップリング容量Cはわずかな充放電を繰り返しながら電圧VCC/2を維持します。
方形波に対する応答(初期状態)
電源投入時はCの初期電荷が0なので、図3のようにはじめはVinとVoutの直流成分はほぼ同じになります。ただし、「Vout=Highのとき(a)の向きに流れる電流(充電電流) > Vout=Lowのとき(b)の向きに流れる電流(放電電流)」となるので、Cが徐々に充電され、Voutの直流レベルが低下します。
容量とダイオードによるレベルシフト回路
容量結合回路にダイオードを追加すると出力の直流レベルをシフトさせることができ、検波回路等で利用されています。
図4(a)は通常の容量結合回路で、Voutが正のサイクルではaの向きに電流が流れ、Voutが負のサイクルではbの向きに電流が流れて容量Cが充放電されます。 1サイクルの間にaの向きに流れる電流とbの向きに流れる電流の和が0となるので、容量Cの両端の電圧は0となります。よって、Voutは0Vを中心に振れます。
図4(b)は出力にダイオードを付けた回路で、はじめ容量Cの両端の電圧が0と仮定するとVoutが正のサイクルでダイオードがオン、負のサイクルでオフします。1サイクルの間にaの向きに流れる電流がbの向きに流れる電流よりも大きくなるので、容量Cが図示したような極性に充電されます。定常状態では、Voutのピーク値がVF(ダイオードのオン電圧)となり、Voutがピーク値付近となる瞬間だけダイオードがオンし、1サイクルの間にaの向きに流れる電流とbの向きに流れる電流の和が0となります。
図4(c)は出力のダイオードの極性を逆にした回路で、Voutが正のサイクルでダイオードがオフ、負のサイクルでオンします。1サイクルの間にbの向きに流れる電流がaの向きに流れる電流よりも大きくなるので、容量Cが図示したような極性に充電されます。定常状態では、Voutの極小値が−VFとなり、1サイクルの間にaの向きに流れる電流とbの向きに流れる電流の和が0となります。