Widlarバンドギャップリファレンス
この回路は、Widlar氏の論文(JSSC vol.sc6,no.1,Feb. 1971)等でWidlarバンドギャップリファレンスの動作原理を説明する際によく利用される回路ですが、そのまま実用回路として使用されることはほとんどありません。トランジスタ特性のもつ欠点を補償するための様々な補助素子を追加しないと実用回路として使えないからです。
下の回路でR1,Q1,Q2,R3部分はWidlar電流源となっていることがわかります。この部分を1つの抵抗で置き換えるとVBEマルチプライヤ回路になります。下の回路ではQ1とQ2のVBE差に比例した正の温度係数をもつ電流が生成されます。
VR3=VTln(n)≈60 mV @300K,n=R2R1,VT=kTqVREF=VBE3+R2R3IR3=VBE3+aT (aは温度に依存しない定数,Tは絶対温度)VREFの式の第1項はT=300Kで約0.65V, 温度係数は約−2mV/℃なので、第2項のa=+0.002となるようにR2/R3比を設定します。よって第2項はT=300Kで0.002×300=0.6Vとなります。よって、
VREF≈0.65+0.6=1.25 Vとなります。このように、バンドギャップリファレンスで温度係数が0の電圧をつくると1.25Vの整数倍となります。この電圧をバッファリング・分圧して所望の電圧をつくります。
この回路はセルフバイアス駆動ではありませんが、Q4によってQ3のコレクタ電流を安定化しているので、VREFの電源電圧依存性が小さくなっています。
適切に設計されたバンドギャップリファレンスの温度特性は、室温付近でフラットな特性となります。温度特性は、VBEの温度特性が厳密には直線ではないこと、ベース電流の寄与があること、電流増幅率が温度特性をもつことに起因して複雑な形状の曲線となります。
Running Simulation ...