コンパレータを使用したLC発振回路

通常、LC発振回路は(コルピッツ発振回路のように)トランジスタを使用してつくりますが、数100kHz程度であればコンパレータを使用してつくることもできます。 このページで解説する回路は、LM311を使用したLCメータの回路として知られています。


動作原理

図1(a)のように、ゲインAのアンプに抵抗RFを介して正帰還をかけると、この回路の入力抵抗Rinは次式のように負性抵抗となります。

\begin{align} R_{in}=\frac{v_{in}}{i_{in}}=-\frac{R_F}{A-1} \end{align}

図1(b)は、コンパレータを使用して実現した負性抵抗にLCタンクを接続したもので、LCタンクの損失Rが負性抵抗で相殺されるため発振回路となります。

図1: コンパレータを使用したLC発振回路の原理

発振振幅

Voutはコンパレータ出力なので振幅VCCの方形波となります。この方形波をフーリエ級数展開したときの基本波成分(Vout端子の下の点線波形)の振幅は(4/π)×VCCです。一方、vpは並列共振回路の出力電圧なので正弦波となります。よって、このコンパレータの等価的なゲインAは

\begin{align} A=\frac{\frac{4}{\pi}V_{CC}}{\text{vpの振幅}} \end{align}

となります。vpの振幅が小さいうちはRとRinの合成抵抗(R||Rin)が負となってvpが成長しますが、vpが成長するとともにゲインAが低下し、合成抵抗R||Rin→∞ (|Rin|=R)となります。定常状態では|Rin|=Rと上の2式より

\begin{align} \text{vpの振幅}=\frac{\frac{4}{\pi}V_{CC}}{1+\frac{R_F}{R}} \end{align}

となります。


コンパレータLM311を使用したLC発振回路

図2は電子工作でよく見かけるLC発振回路で、電源電圧は5V(単電源)です。C2はDCカット用、R1,R2によって発振中のvpの動作点をVCC/2=2.5Vとしています。LM311の出力はオープンコレクタなのでプルアップ抵抗R5を付けています。

LM311のマイナス入力(vn)は一定電圧とはしません。そうすると、Vout=VCCまたは0V一定でvpとvnの電圧が大きく離れたまま状態遷移しない(発振しない)モードになるからです。 C3,R4はスタートアップ回路(始動回路)としてふるまいます。たとえばVout=VCC, vp≫vnであっても、vnが徐々に増加してvp<vnとなってVoutの状態がVCC→0Vと遷移し、これが発振の種となって発振を開始します。 発振周波数に対してC3はショートとみなせるので、発振中のvnは一定電圧(2.5V)となります。

図2: コンパレータLM311を使用したLC発振回路