負帰還回路の考え方(電圧帰還・並列注入形の例)

負帰還回路の形式は、出力を電圧で検知するか/電流で検知するか、入力信号と直列に(電圧として)注入するか/並列に(電流として)注入するかによって4通りあります。ここでは、エミッタ接地アンプの出力を電圧で検知し入力と並列に(電流として)注入する「電圧帰還・並列注入形」について解析します。ちなみに、「電圧帰還・並列注入形」をオペアンプで実現したものが反転アンプです。

電圧帰還・並列注入形のブロック図は図1のようになります。電圧帰還・直列注入形の場合とは異なり、(電圧ではなく)電流の差が増幅されます。

図1: 電圧帰還・並列注入形負帰還回路のブロック図

図1のブロック図を数式で表現すると

\begin{align} \text{ゲイン:}\quad \frac{v_{out}}{v_{in}}&=\frac{A}{1+AH}Y_1\\ &\approx \frac{1}{H}Y_1\quad AH\gg 1\text{ の場合} \end{align}

となります。Y1は入力電圧vinを電流に変換する役割をもちます。

図2は図1のブロック図をトランジスタで構成したもので(バイアス用抵抗、カップリング容量は省略しています)、出力側では電圧を検知し、入力側では帰還信号をiinと並列に注入しています。

図2: 電圧帰還・電流注入形負帰還回路(小信号回路)

電圧帰還・並列注入形は、図3のようにYパラメータ等価回路を使用すると解析しやすくなります。 基本アンプの入力側から帰還回路を見ると、voutに比例した電流が帰還されることが分かります。一方、基本アンプの出力側から帰還回路を見ると、入力信号が帰還回路を経由して直接出力に伝わる成分vbe/RFが生じることが分かります。この成分は基本アンプのgmvbeに対して小さいので無視できます。また、帰還回路の入力抵抗RFが基本アンプの負荷として接続されることも分かります。 vinとR1の部分はテブナンの定理を適用して電流源に変換しています。

図3: 小信号等価回路(Yパラメータ等価回路)

図3の基本アンプと帰還回路を融合させると図4(a)となります。図4(b)はそのブロック図です。

図4: 小信号等価回路

図4より

\begin{align} \text{ゲイン:}\quad \frac{v_{out}}{v_{in}}&=-\frac{1}{R_1}\frac{A}{1+AH}\\ &\approx \frac{1}{R_1}\frac{1}{H}=-\frac{R_F}{R_1}\quad AH\gt\gt 1\text{ の場合} \end{align}

となります。エミッタ接地1段のゲインは数10程度なのでループゲインAHはそれほど大きくなく、実際のゲインはRF/R1よりも小さくなります。